相続放棄の手続きが終わると、法律上は相続人ではなくなる。相続に関する権利も義務も、自分には関係がなくなったはずだ。そう思っていたところに、連絡が届くことがある。
兄弟からの相談、親戚からの確認、場合によっては債権者からの問い合わせ。手続きは終わったのに、なぜ連絡が続くのか。その状況に戸惑う人は少なくない。
兄弟からの相談が続く
相続放棄をしたとしても、兄弟との関係が終わるわけではない。他の兄弟が遺産分割を進める中で、相談や報告の連絡が来ることがある。
「こういう場合どう思う」「こういう話が出ているんだけど」といった内容が届く。相続には関係ないはずなのに、意見を求められる。答えていいのか、答えなくていいのか、判断に迷うことがある。
債権者からの連絡
親に債務があった場合、相続放棄をすれば債務を引き継ぐことはない。しかし、債権者がそれを知らないうちは、連絡が届くことがある。
相続放棄が受理された証明書を送れば対応できることが多いが、そもそも連絡が来ること自体に驚く人もいる。手続きをしたのに、なぜ自分のところに連絡が来るのか。その理由を理解するまでに時間がかかることがある。
親戚からの確認
相続放棄をしたことを親戚全員が知っているとは限らない。法事などで顔を合わせたときに、「相続どうなった」と聞かれることがある。
放棄したことを説明すると、驚かれたり、理由を聞かれたりすることもある。説明するたびに当時のことを思い出すことになり、気持ちの整理がつきにくくなることがある。
次順位相続人への影響
相続放棄をすると、相続権が次順位の相続人に移ることがある。子が全員放棄すれば親の兄弟に、といった具合だ。その影響で、思わぬところから連絡が来ることがある。
「あなたが放棄したから、こちらに相続権が来た」という連絡を受けて、初めてそうした仕組みを知る人もいる。自分の放棄が他の人に影響を与えていたことを、後から知ることになる。
「もう関係ない」と言いにくい状況
連絡が来たとき、「もう関係ないので」と言い切れれば話は早い。しかし、相手が兄弟や親戚の場合、そう簡単にはいかないことがある。
関係ないと言うことが、冷たい態度に見えるのではないかという懸念がある。かといって、相続の話に巻き込まれるのは避けたい。その間で、どう対応するか迷うことになる。
実家の片付けへの協力要請
相続放棄をしても、実家の片付けを手伝ってほしいと言われることがある。法的には関係がないが、人手が足りないから、という理由で連絡が来る。
手伝うかどうかは本人の判断だが、断りにくい雰囲気があることもある。手伝えば感謝されるが、相続には関わりたくないという気持ちとの間で揺れることがある。
連絡が来るたびに思い出すこと
連絡が来るたびに、相続放棄を決めた当時のことを思い出す。なぜ放棄したのか、その判断は正しかったのか。終わったはずのことを、繰り返し考えることになる。
時間が経てば連絡の頻度は減っていくが、完全になくなるわけではない。数年後に突然連絡が来ることもある。そのたびに、当時の感覚が少しだけ蘇る。
連絡を無視するという選択
連絡に対して、返答しないという選択をする人もいる。法的には返答する義務がないことが多いからだ。
ただ、無視することで関係が悪化するリスクもある。返答しないことを「冷たい」と受け取られることもある。どちらを選んでも、何らかの影響が残る可能性がある。
「終わった」と思えるまでの時間
相続放棄の手続き自体は、数週間から数か月で完了する。しかし、心理的に「終わった」と思えるまでには、もっと時間がかかることがある。
連絡が来なくなり、相続の話題を耳にしなくなり、ようやく終わったと感じられる。その時間の長さは、人によって異なる。
相続放棄という手続きは明確だが、その後の現実は必ずしも明確ではない。手続きの外側で続くやり取りを、どう扱っていくかは、それぞれの状況に委ねられている。
参考情報:
– 裁判所|相続の放棄の申述

