オンライン契約の解約が後回しになる理由

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オンライン契約の解約が後回しになる理由

親が亡くなったあと、銀行口座や保険の手続きに追われ、月がいくつか過ぎた。その頃になって、親のスマホに届いていた請求の通知や、自宅に届いていたサブスクの明細を、誰かがまとめて持ち寄った。解約しなければいけないのは分かっている。ただ、どの契約がどこにあり、どう手続きすればいいかが、一枚の紙にまとまっていない。ログイン情報も、親しか知らなかった。解約は「落ち着いてから」と言いながら、他の手続きのあとに回され続けている。

契約の全体像が誰にも見えていない

親が使っていたネットサービスの一覧は、どこにも残っていなかった。クレジットカードの明細には、月額〇〇円の引き落としがいくつか並んでいる。何のサービスかは、名前から推測するしかない。動画配信、音楽、クラウドストレージ、新聞の電子版。家族が「これもあった」「これも聞いたことある」と出し合っても、一覧になるまでに時間がかかった。

本人に聞けば答えられたことが、もう聞けない。解約するには、まず何があるかを把握しなければならない。その把握が、いつも「もう少し調べてから」で止まる。

ログインできない壁

解約するには、サービスにログインする必要がある。親のIDとパスワードは、メモに残っていなかった。パスワードリセットには、登録メールアドレスへ送られるリンクが必要だ。そのメールアドレスには、今度は別のパスワードが必要だった。

スマホはロックがかかったまま、解除できていない。メールはスマホからしか見られない設定だったかもしれない。家族の誰かが「業者に頼むか」と言い、誰かが「まだ何とかなるかも」と言った。業者に頼むかどうかは決まらず、ログインの試みも、何度か失敗したあと止まった。

他の手続きが優先される

相続のなかで、優先度が高いとされるのは預金や不動産の手続きだ。それらに比べて、月額数百円のサブスクの解約は、緊急ではないように見える。役所や銀行への提出期限がある書類に追われている間、オンライン契約の解約は「後で」のまま残る。

「後で」が何日後なのかは、決められていない。気づいたときには、数ヶ月分の請求が積み上がっている。解約すれば止まる請求が、止まらないまま口座から引き落とし続けている。その口座は、相続手続きの途中で解約される予定だった。解約の前に、自動引き落としを止めなければならない。その順序が、いつも後ろにずれていく。

誰が手続きするか決まらない

オンラインの解約手続きは、相続人なら誰か一人がログインして進められる場合がある。ただ、この家では誰がその「誰か」になるかが、決まっていなかった。ITに詳しいとされる兄弟が一人いるが、その人は遠方に住み、なかなか実家に来られない。近くに住む人は「機械は苦手で」と言った。

苦手な人が無理にやるより、得意な人がまとめてやってくれた方が早い。そういう話にはなるが、得意な人が時間を作るまで、誰も手を動かさない。時間は作られないまま、請求は続いている。

解約の方法が分からない

ようやくログインできたサービスが一つあった。画面を見ても、解約のボタンがどこにあるか分からない。利用規約のページが長く、解約条件が書いてある箇所を探すのに時間がかかった。電話で解約できると書いてあり、コールセンターに電話した。相続であることを伝えると、必要な書類の説明があった。書類を揃えて、また電話するか、郵送するか。その説明を聞いた人が、内容を他の相続人に伝えた。伝えたあと、「今度みんなで書類揃えよう」と言ったが、その「今度」の日は、まだ決まっていない。

止まらない請求と、止まらない後回し

請求書は毎月届く。あるいは、届かずに口座から引き落としが続いている。解約すれば止まる。止めるには、手続きが必要だ。手続きには、時間と、誰かが動く必要がある。時間は他のことに使われ、誰かは決まらない。解約は後回しにされ、後回しにされた解約は、また次の「そのうち」に預けられている。請求が止まらない理由は、手続きが進まないからだ。手続きが進まない理由は、誰が何をいつするかが、ずっと決まっていないからである。