相続の話をする前に、親の部屋を片付けてしまった家庭

相続と人間関係

相続の話をする前に、親の部屋を片付けてしまった家庭

親が亡くなった後、実家の片付けを始める。長年住んでいた家には、物が溢れている。衣類、書類、日用品、思い出の品。いつまでもそのままにしておくわけにはいかない。

片付けを進めていくうちに、気づく。相続の話し合いをする前に、部屋がきれいになってしまった。何がどこにあったのか、もう確認できない。捨ててしまったものの中に、重要なものがあったのではないか。

善意で始めた片付けが、後から問題を生むことがある。


片付けを始めるタイミングの難しさ

親が亡くなった後、実家の片付けをいつ始めるか。明確な正解はない。

葬儀が終わってすぐに始める人もいれば、しばらく時間を置く人もいる。四十九日が過ぎてから、という考え方もある。賃貸住宅であれば、退去期限があるかもしれない。

片付けを始める前に相続の話し合いをすべきなのか、片付けをしながら話し合いを進めるのか。この順序について、家族で認識が一致していないことがある。


「早くしなければ」という焦り

片付けを急ぐ理由はいくつかある。

賃貸住宅の場合、家賃が発生し続ける。持ち家でも、空き家を放置することへの不安がある。近隣への迷惑、防犯上の問題、家の傷み。「早く片付けなければ」という焦りが生まれる。

また、物が多すぎて圧倒される感覚もある。見るたびに故人を思い出して辛い、という気持ちから、早く片付けてしまいたいと思うこともある。

この焦りが、相続の話し合いを待たずに片付けを進める動機になることがある。


片付けと遺品整理の違い

「片付け」という言葉には、「不要なものを処分する」というニュアンスが含まれている。しかし、親の遺品を整理することは、単なる片付けとは異なる面がある。

遺品の中には、相続財産として扱うべきものが含まれている可能性がある。現金、預金通帳、有価証券、貴金属、不動産の権利証。これらは、相続人全員で確認すべきものである。

片付けの感覚で進めてしまうと、「これは古いから捨てよう」「これは価値がなさそう」という判断が、後から問題になることがある。


捨ててしまった後に気づくこと

片付けが終わった後、「あれはどうなった?」という問いが出てくることがある。

「お父さんの腕時計はどこ?」「通帳がもう一冊あったはず」「あの金庫の中身は?」。他の相続人から聞かれたとき、「捨てた」「なかった」と答えるしかないことがある。

本当になかったのか、見落としたのか、捨ててしまったのか。今となっては確認する方法がない。この曖昧さが、疑念を生むことがある。


「勝手に捨てた」という批判

片付けを主導した人に対して、他の相続人から批判が向けられることがある。

「なぜ相談しなかったのか」「勝手に捨てるなんて」「大事なものがあったかもしれないのに」。片付けをした本人は、良かれと思ってやったことである。しかし、他の相続人から見れば、「自分たちに黙って進めた」ことになる。

特に、遠方に住んでいて片付けに参加できなかった相続人は、何が残っていて何が捨てられたのかを知る術がない。その不透明さが、不信感につながることがある。


何が財産だったのかわからなくなる

片付けが終わった後、相続財産の全体像を把握することが難しくなることがある。

親がどのような財産を持っていたのか。預金口座はいくつあったのか。株や投資信託はあったのか。保険には入っていたのか。これらを確認するための手がかりが、片付けの過程で失われている可能性がある。

通帳や証書、契約書類などは、「古い紙」として処分されてしまうことがある。後から「あの書類が必要だった」と気づいても、取り戻すことはできない。


思い出の品と財産的価値の重なり

遺品の中には、思い出の品と財産的価値が重なっているものがある。

親が大切にしていた腕時計、アクセサリー、骨董品、絵画。これらは、思い出の品として見ることもできるし、財産として見ることもできる。

片付けの際に「これは古いから」「これは趣味のものだから」という判断で処分されることがある。しかし、後から調べると、思わぬ価値があったということもある。あるいは、他の相続人が「それが欲しかった」と言うこともある。

どれが財産でどれが単なる遺品なのか、判断が難しいものは多い。


片付けを誰がするかという問題

実家の片付けを誰が担当するかは、家庭によって異なる。

実家の近くに住んでいる人が担当することが多い。物理的に動きやすいからである。しかし、近くに住んでいるからといって、片付けの全責任を負う義務があるわけではない。

片付けを担当した人は、時間と労力を費やしている。その負担を評価されることは少なく、むしろ「勝手に進めた」と批判されることがある。片付けをしなければ「何もしない」と言われ、片付けをすれば「相談しなかった」と言われる。どちらにしても批判を受ける構造がある。


結び

親の部屋を片付けることは、いつかは必要になる作業である。しかし、そのタイミングと方法によっては、相続の話し合いに影響を与えることがある。

善意で始めた片付けが、「勝手に進めた」と受け取られることがある。財産として確認すべきものが、処分されてしまうことがある。

片付けと相続は、別々のように見えて、実は深く関わっている。その関わりに気づかないまま片付けを進めると、後から問題が生じることがある。


参考情報