相続放棄という選択肢が視野に入ったとき、すぐに決断できる人は少ない。放棄するかどうかを考える過程で、さまざまな迷いが生じることがある。
その迷いは、法律的な問題だけでなく、家族との関係や自分自身の感情にも関わっている。
放棄という言葉の重さ
「放棄」という言葉には、何かを手放す、諦めるという響きがある。相続放棄を選ぶことは、法律上の権利を失うことを意味する。
しかし、その言葉の重さは、法律的な意味を超えて感じられることがある。家族との関係を放棄するように受け取られないか。そうした懸念が浮かぶことがある。
他の家族がどう思うかという問い
相続放棄を検討するとき、他の家族の反応が気になることがある。放棄すると言ったら、どう受け止められるのか。責められるのではないか。
その問いが頭の中で繰り返されると、決断を先延ばしにしたくなる。他の家族に相談するかどうか自体が、悩みの種になることもある。
財産の内容が見えていない段階
相続放棄を検討する時点で、財産の全体像が把握できていないことがある。何がどれだけあるのか、負債はあるのか。そうした情報が揃っていないまま判断を迫られることがある。
情報が不足している状態で決断することへの不安が、迷いを深くする。
放棄しなかった場合の負担への懸念
相続に関わり続けることへの負担を想像することがある。手続きにどれだけの時間がかかるのか。話し合いはどうなるのか。
その負担を避けたいという気持ちと、放棄することへの抵抗が、同時に存在することがある。
期限があることへの焦り
相続放棄には、法律上の期限がある。相続の開始を知った時から三か月以内に家庭裁判所に申述する必要がある。
その期限が迫ってくると、十分に考える時間がないという焦りが生まれる。焦りの中で決断することへの不安が、迷いをさらに複雑にする。
一度放棄すると撤回できないという事実
相続放棄は、原則として撤回することができない。一度放棄すると、後から「やはり相続したい」と思っても、その選択肢は閉ざされる。
その不可逆性が、決断を慎重にさせる。本当にこれでいいのか、という問いが何度も浮かんでくる。
放棄しても関係が続くことへの戸惑い
相続放棄をしても、家族であることは変わらない。葬儀や法要、日常的なやり取りは続いていく。
放棄という決断が、その後の関係にどう影響するのか。それを想像することへの戸惑いがある。
放棄の理由を説明することへの抵抗
相続放棄を選んだ場合、その理由を問われることがある。なぜ放棄するのか。他の家族や親族から説明を求められることを想像すると、その対応に気が重くなる。
理由を言葉にすること自体が難しいこともある。感情的な部分を説明することへの抵抗がある。
放棄しなかった人との関係
自分が放棄し、他の家族が相続を受ける場合、その後の関係性に変化が生じる可能性がある。相続財産の分配が、自分を除いた形で行われる。
その状況を受け入れられるかどうか。放棄した後の自分の立場を想像することへの不安がある。
結びに
相続放棄を選ぶまでに生じる迷いは、単純な損得の計算では片付かないことが多い。その迷いの背景には、家族との関係や自分自身の感情が複雑に絡み合っている。
参考情報
– 裁判所:相続の放棄の申述

