死亡届は出したが、その後何をすればいいか分からなくなったケース

相続と人間関係

人が亡くなると、まず死亡届を出す。これは比較的早い段階で行われる。病院や葬儀社から案内されることもあり、手続きそのものに迷う余地は少ない。届を出し、火葬許可証を受け取り、葬儀が終わる。そこまでは、周囲に導かれるようにして進むことが多い。

問題はその後である。死亡届を出した時点で、行政上のさまざまな手続きが動き始めるが、それが何を意味するのか、次に自分は何をすればいいのか、分からなくなる場面がある。葬儀が終わった直後は疲労もあり、考える余裕がないまま日が過ぎていく。

死亡届の提出は「始まり」にすぎない

死亡届が受理されると、戸籍や住民票に反映される。しかし、それによって自動的に進む手続きはごく一部に限られる。年金の停止、健康保険の資格喪失、銀行口座の凍結。それぞれ届け出先が異なり、届け出の主体も異なる。死亡届を出したことで「やるべきことは済んだ」と感じてしまうことがあるが、実際にはそこからが手続きの本体である。

何をすべきか一覧で示されない

死亡届を出した際に、役所から手続きの一覧表を渡されることもある。しかし、その一覧がすべてを網羅しているとは限らない。役所の管轄外の手続き、たとえば民間の保険や銀行、不動産に関するものは含まれていないことが多い。結果として、何が終わっていて何が残っているのかを自力で把握しなければならない状態になる。

手続きごとに窓口が違う

年金は年金事務所、健康保険は市区町村または健康保険組合、銀行は各金融機関、不動産は法務局。手続きの数だけ窓口があり、それぞれに必要書類が異なる。戸籍謄本が必要なもの、住民票の除票が必要なもの、印鑑証明が必要なもの。同じ書類を複数の窓口に提出することもあり、そのたびに取得する手間が発生する。

誰がやるのか決まっていない

死亡届は葬儀社が代行してくれることもあるが、その後の手続きを誰がやるかは家庭によって異なる。長男が引き受ける場合もあれば、近くに住んでいる家族が引き受ける場合もある。明確に決めないまま、気づいた人が個別に動き始めることもあるが、全体を把握している人がいなければ、手続きの抜け漏れが生まれやすい。

期限があることに後から気づく

相続放棄は3か月以内、相続税の申告は10か月以内、準確定申告は4か月以内。こうした期限の存在を、手続きを進める中で初めて知る家庭がある。期限があること自体は制度として定められているが、それを知るタイミングが遅れると、選択肢が狭まったり、手続きが複雑になったりすることがある。

葬儀後の空白期間

葬儀が終わると、しばらく何もする気になれない期間がある。悲しみや疲労が重なり、書類を広げる気力がない。周囲からの弔問や挨拶の対応に追われることもある。その間にも期限は進んでいるが、手続きに着手するまでに数週間から数か月が空くことは珍しくない。

調べても全体像が見えにくい

インターネットで検索すれば、個別の手続きに関する情報は見つかる。しかし、自分の家庭に該当する手続きがどれなのかを判断するには、故人の資産状況や契約関係を把握している必要がある。情報はあるが、自分の状況に当てはめる作業は自分でやるしかない。その作業自体が、何から始めればいいか分からない原因のひとつになっている。

専門家に相談するタイミングも分からない

税理士、司法書士、弁護士。相続に関わる専門家は複数いるが、自分の状況にどの専門家が必要なのかを判断すること自体が難しい。相続税がかかるかどうか分からなければ、税理士に相談すべきかどうかも分からない。不動産があるかどうか分からなければ、登記の必要性も判断できない。相談する前に、まず自分の状況を整理する必要があるが、その整理の仕方が分からない。

一つ終わると次が見える構造

手続きをひとつ終えると、そこで初めて次に必要な手続きの存在が分かることがある。銀行に行って初めて残高証明書の必要性を知り、残高証明書を取るために戸籍謄本が必要だと分かり、戸籍謄本を取るために本籍地を確認する必要があると分かる。手続きが連鎖的につながっており、全体像が最初から見えない構造になっている。

立ち止まっている時間にも意味がある

何をすればいいか分からないまま過ごす時間は、外から見れば停滞に見えるかもしれない。しかし、その時間の中で状況が少しずつ整理されていくこともある。分からないという状態は、必ずしも何もしていないこととは同じではない。手続きの全体像は、動き始めてから少しずつ輪郭を持ち始める、そういう性質のものなのかもしれない。


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