ポイントや電子マネーが放置されたケース

相続とデジタル

ポイントや電子マネーという言葉は日常的に使われている。コンビニで、ネット通販で、交通系カードで。生活のあちこちに散らばっている残高は、使っている本人にとっては当たり前のものだが、それがどこにいくら残っているかを把握しているのは、たいていその本人だけである。

親が亡くなったあと、銀行口座や不動産の手続きは進められても、ポイントや電子マネーの話が出ることは少ない。存在自体を知らなければ、話題にすらならない。そして、有効期限が過ぎるか、アカウントが停止されるかして、気づかないまま消えていくことがある。

残高があること自体が分からない

ポイントや電子マネーは、通帳に記載されるわけではない。アプリの中、ウェブサイトのマイページ、カードのICチップの中にある。ログイン情報がなければ確認すらできないものも多い。財産として目に見える形で残っていないことが、見落とされる要因のひとつになっている。

「少額だから」という前提が生まれやすい

ポイントや電子マネーに対して、家族が「たいした金額ではないだろう」と感じることがある。実際に少額であることも多いが、複数のサービスに分散していた場合、合算するとまとまった金額になることもある。ただ、その合算をする手段がないまま、個別に放置されていく。

相続財産として扱われにくい構造

法律上、ポイントや電子マネーの扱いはサービスごとに異なる。利用規約で「一身専属」とされているものは相続の対象にならない場合もあり、逆に残高として引き継げるものもある。この区別を正確に把握するには、個々のサービスの規約を確認する必要があるが、そもそもどのサービスを使っていたかが分からなければ、確認のしようがない。

家族の誰も管理していなかった領域

銀行口座は家族が把握していることもある。保険や不動産も、書類が残っていれば手がかりになる。しかし、ポイントや電子マネーを家族間で共有している家庭は少ない。本人にとっても管理しているという意識が薄い場合があり、家族から見れば存在自体が未知の領域になっている。

スマホの中に情報があるが触れない

多くのポイントサービスや電子マネーは、スマホのアプリで管理されている。親のスマホがロック解除できなければ、そこにどんなアプリが入っているかすら確認できない。ロック解除ができたとしても、アプリごとにログインが必要なものもあり、パスワードが分からなければ先に進まない。

有効期限という時間の壁

ポイントには有効期限があるものが多い。相続の手続き全体が落ち着くまでに数か月から一年以上かかることもあるが、その間にポイントが失効していることがある。期限が切れてから存在に気づいても、取り戻す手段がないことがほとんどである。

手続きの窓口が見つかりにくい

銀行であれば窓口がある。役所にも相談先がある。しかし、ポイントサービスや電子マネーの相続に関する問い合わせ先は、サービスごとにばらばらで、そもそも相続を想定した対応窓口がない場合もある。問い合わせ先を探すこと自体が手間になり、後回しにされやすい。

交通系カードの残高が宙に浮く

交通系ICカードは広く使われているが、記名式と無記名式で対応が異なる。記名式であれば払い戻しの手続きが取れることもあるが、無記名式の場合はそもそも誰のものかを証明する手段がない。財布の中に残されたカードを見ても、残高がいくらあるのかはカードリーダーがなければ確認できない。

放置されても誰も困らないように見える

ポイントや電子マネーは、放置しても督促が来るわけではない。銀行口座の凍結のように日常生活に影響が出ることもない。誰にも迷惑がかからないように見えるため、対応の優先度が下がりやすい。結果として、存在を認識していても「今やらなくていい」という判断が繰り返される。

そこにあったものが静かに消えていく

ポイントや電子マネーは、本人が生きていた日常の痕跡でもある。どこで買い物をしていたか、どのサービスを使っていたか。そうした情報が、期限切れやアカウント停止という形で、誰にも引き継がれないまま消えていく。それは財産の問題というより、生活の断片が行き場を失う過程に近いのかもしれない。


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