相続に関わらないという選択の現実

相続と人間関係

相続放棄という法的な手続きではなく、話し合いに積極的に参加しない、という形で距離を置く人がいる。遺産を受け取る権利は残したまま、関わりを最小限にするという選択だ。

その選択には、様々な背景がある。争いに巻き込まれたくない、他の兄弟に任せたい、そもそも興味がない。理由は人それぞれだが、選択した後にどうなるかは、必ずしも予想通りではないことがある。

「任せる」と言ったその後

「任せる」「どっちでもいい」と言って、話し合いから距離を置く。その言葉は、相手に判断を委ねることを意味する。

しかし、委ねた結果が自分の期待と違っていたとき、複雑な感情が生まれることがある。任せると言った以上、文句は言いにくい。かといって、納得しているわけでもない。そうした状態が続くことがある。

話し合いの経緯を知らない

関わらないことを選ぶと、話し合いの経緯を知らないまま結論だけを聞くことになる。なぜそういう分け方になったのか、どういう議論があったのか、詳しくは分からない。

後から聞いても、その場にいなかった人には伝わりにくいことがある。結論に対して疑問を持っても、経緯を知らないために何も言えないことがある。

他の兄弟の負担

相続の話し合いには、時間と労力がかかる。書類を集め、金融機関に連絡し、不動産の評価を調べる。そうした作業を、関わらない人の分まで他の兄弟が担うことになる。

その負担が大きくなると、関わらない人への不満が生まれることがある。口には出さなくても、「自分たちだけが苦労している」という感覚が蓄積していくことがある。

感謝と不満の間

関わらないことを選んだ人が、結果的に遺産を受け取ることになる場合がある。話し合いを他の兄弟に任せて、受け取るものは受け取る。

その構図に対して、他の兄弟が複雑な感情を持つことがある。不公平だと感じても、相続の権利がある以上、法的には問題ない。感謝されるわけでもなく、かといって責めるわけにもいかない。

情報から切り離される

話し合いに参加しないと、相続に関する情報から切り離されていく。親の財産がどれくらいあったのか、どういう分け方をしたのか、詳細を知らないまま終わることもある。

それでいいと思っていても、後から知りたくなることがある。しかし、その時点では話し合いは終わっており、改めて聞くのも気まずいことがある。

印鑑を押す場面

関わらないと決めていても、遺産分割協議書には印鑑を押す必要がある。その場面だけは、関わりを避けられない。

書類の内容を確認して印鑑を押すのか、内容を確認せずに押すのか。どちらにしても、自分の判断が求められる場面が来る。

「関わらない」と「放棄」の違い

相続放棄をすれば、法的に相続人ではなくなる。一方、関わらないという選択は、相続人としての立場は残したまま、話し合いに参加しないということだ。

この違いを理解していないと、後からトラブルになることがある。関わらないつもりでいたのに、債務の相続人として連絡が来る、といったことが起きることもある。

関係への影響

相続に関わらないという選択が、兄弟との関係に影響を与えることがある。その場では何も言われなくても、後から関係が変わることがある。

表面上は変わらなくても、どこかよそよそしくなる。そうした変化を感じ取っても、原因を特定するのは難しいことがある。

選択の結果を引き受けること

関わらないという選択をした以上、その結果は自分で引き受けることになる。話し合いの結論が気に入らなくても、後から覆すのは難しい。

それを分かった上で選択する人もいれば、そこまで考えずに選択する人もいる。どちらにしても、選択した後の現実は、選択する前には見えにくいことが多い。


相続に関わらないという選択は、一見すると楽な道に見えることがある。しかし、その選択がもたらす現実は、必ずしも単純ではない。何を選び、何を引き受けるか。その問いは、関わらないという選択にも付きまとう。


参考情報:
法務省|相続に関するルールが大きく変わります