兄弟仲は悪くない。むしろ良い方だと思っていた。正月には顔を合わせるし、連絡も取り合っている。何かあれば相談もする。そういう関係が続いていた。
ところが、親が亡くなって相続の話になると、思っていたようには進まない。意見が合わない場面が出てくる。関係が悪いわけではないのに、なぜか噛み合わない。その状況に、当事者自身が戸惑うことがある。
仲が良いからこそ遠慮がある
普段から仲が良い兄弟ほど、相続の話を切り出しにくいことがある。お金の話をすると関係が変わってしまうのではないか、という懸念が働くからだ。
その遠慮が積み重なると、本音を言わないまま話し合いが進むことがある。言いたいことがあっても、関係を壊したくないから黙っている。その沈黙が、後から問題になることがある。
「当然こうなる」という前提が違う
兄弟それぞれが、相続についての前提を持っていることがある。長男だから実家を継ぐ、介護をしていたから多めにもらう、平等に分けるのが当然、といった具合だ。
その前提が一致していれば問題ないが、違っている場合は話が噛み合わない。お互いに「当然そうなる」と思っていたことが、実は違っていたと分かったとき、戸惑いが生まれる。
親との関係の違い
同じ親の子どもでも、親との関係は一人ひとり異なる。近くに住んでいたか、遠くにいたか。介護に関わったか、関わらなかったか。子どもの頃の扱いに差があったか。
そうした違いが、相続に対する考え方に影響することがある。本人は意識していなくても、過去の経験が判断に反映されていることがある。
配偶者の存在
兄弟それぞれに配偶者がいる場合、配偶者の意向が影響することがある。直接話し合いに参加しなくても、家に帰ってから意見を聞かれることがある。
「うちの夫がこう言っている」「妻がこう考えている」という形で、兄弟以外の視点が入ってくる。それによって、兄弟だけで話していたときとは違う展開になることがある。
経済状況の違い
兄弟の経済状況が異なることは珍しくない。収入が違えば、相続に対する考え方も違ってくることがある。
経済的に余裕がある側は「別にこだわらない」と言い、余裕がない側は「少しでも多く」と考えるかもしれない。その違いを口に出すのは気が引けるため、表面に出ないまま話し合いが進むことがある。
「言わなくても分かる」という期待
仲が良い兄弟ほど、「言わなくても分かってくれる」という期待を持ちやすい。しかし、相続のような具体的な話になると、言わなければ伝わらないことが多い。
期待通りに相手が動かなかったとき、「なぜ分かってくれないのか」という感情が生まれることがある。それが不満につながり、話し合いがぎくしゃくすることがある。
過去の貸し借りが浮上する
相続の話し合いの中で、過去の貸し借りが話題に出ることがある。昔、親から援助を受けたことがある、生前贈与があった、といった話だ。
本人は忘れていても、他の兄弟は覚えていることがある。その認識の違いが、話し合いを複雑にすることがある。
実家をどうするかで割れる
預貯金であれば分割は比較的分かりやすいが、実家のような不動産は簡単ではない。売るのか、誰かが住むのか、貸すのか。
それぞれの立場や事情によって、考え方が分かれやすい。実家に思い入れがある人と、合理的に処分したい人とでは、話が噛み合わないことがある。
仲が良いまま終わりたいという気持ち
話し合いが難航しても、「仲が良いまま終わりたい」という気持ちを持っている人は多い。だからこそ、強く主張することをためらう。
しかし、ためらっているうちに話が進まなくなることもある。仲を保ちたいという気持ちと、自分の意見を伝えたいという気持ちの間で、揺れ続けることになる。
兄弟仲が良いことと、相続がスムーズに進むことは、必ずしも一致しない。関係の良さが、かえって話し合いを難しくすることもある。その構造を知っておくだけでも、見え方が変わることがある。
参考情報:
– 法務省|相続に関するルールが大きく変わります

